さて、勘違いしないでほしいのだが、俺は別に好きでこんな異常者と暮らしているわけではない。仕事の都合上仕方なく一緒にいるだけなのだ。
俺の職業は何でも屋。人探しや浮気調査という探偵じみたことから、密輸や殺人など裏社会的な仕事も、報酬にもよるが依頼人に頼まれれば何だってやる。やってくる客はそれこそどこにでもいるような一般的な人から、俺と同じような裏の人間、そして依頼したことが明るみに出ることは決して許されない世界に名を轟かしているあの人まで。ありとあらゆる人がやってくる。
こんな仕事をしていると嫌でも有名になってくるもので、俺を殺そうと狙ってくる輩も少なくない。もちろん依頼人共々返り討ちにしてやるが。
いつしか俺の名前は一人歩きして、携帯一つ持っていれば勝手に仕事が舞い込んでくるようになった。
今回の依頼内容はある一人の人物を殺すこと。その人物こそが依頼人であり、標的であるシキミだった。自殺でもすればいいのに、おかしな奴だ。
まぁ、俺からしてみればこんな奴いつでも殺すことはできるし、一人殺すというだけの仕事にしては破格の報酬だし、いいことづくしってわけだ。こいつがこんな性格でさえなければ。